シーラッハ『カールの降誕祭』

 『犯罪』 のシーラッハによる小品3点に、版画家が挿画を入れていく。体感、挿画1枚/5 ページといった頻度。挿画は文章と混然としており、黒い版画に対しては白いフォントを使うなど、画面構成が面白い。

小説の中身について。説明はせず、描写をする。小説のお手本めいているとも思う。三人称だが、その描写は登場人物の認識に寄り添って描かれており、決して逸脱しない。登場人物の所作の描写などはすばらしく、そぎ落とされた短い1文の所作によって、人物の内面に生じている異常・異変を、読者に自然に予感させる。過不足なく、最小限の描写によって人物を造形し、物語を駆動させる。端的に言って完成された小説である。

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