病室で少年の相手をする「ぼく」は、留守番電話にしかつながらない繭と、柔らかい月の追憶を語る少年とのあいだで、目に映るものの輪郭がしだいに滑っていくのを見る。描写が幻想へ横滑りしていく、認識と実在をめぐる一編。

縦書きで読む

あらすじ

大学の敷地を見下ろす部屋で、「ぼく」は本ばかり読んでいる少年の相手をしている。留守電にしかつながらない繭、繰り返し近づいては遠ざかる救急車のサイレン、部屋のあちこちで唐突に立ち上がる無意識の幻想。やがて少年が語りはじめる「柔らかい月」の追憶とともに、ぼくの描写は現実の側から離れていく。

初出

『HARVEST vol.1』(2010年)

関連

作品一覧