量子力学と相対性理論を結びつけたのは物語理論だった——古典として強固な因果を育んできた『雨月物語』の舞台に、大統一理論の帰結として顕れる時空飛び地。その没入は、やがて赤穴宗右衛門の幽霊を自らの復讐へと駆り立てる。肥えゆく因果が語り手をも巻き込みねじれる、蠱惑の可能世界SF。

縦書きで読む

あらすじ

『雨月物語』「菊花の約」を題材にした短編を請け負った「ぼく」は、その舞台を確かめるため出雲へ向かう。鷺の湯温泉の旅館で出会う、どこか見覚えのある女。月山富田城の跡を歩きながら、ぼくは幾重にも語られてきたこの土地の意味論的な強度へと沈んでいき、赤穴宗右衛門が辿った道行きと重なりはじめる。

初出

雨月物語アンソロジー『雨は満ち月降り落ちる夜』(2019年)

関連

作品一覧