盛夏の宅地、開け放たれたマンションの一室。玄関から廊下へ、リビングから書斎へ。棚を開け、本棚を覗き、モニタを読み、ヘッドセットを被る。着目するたびに一段深くなる、縮尺一分の一の地図をめぐる探索の記録。
あらすじ
ある住宅の様子が、外から内へ順に描き出される。玄関、洗面所、リビング、書斎。ある場所に着目するたび、描写はひとつ深い層に入る——収納扉の中、冷蔵庫の隙間、本棚の一冊、モニタに開かれたテキストエディタ、そして机の脇に吊られたヘッドマウントディスプレイの中へ。エーコとボルヘス、董啓章の『地図集』を引きながら、縮尺一分の一の地図は実現しうるかという問いが、部屋そのものの構造として組み上がっていく。
初出
ねじれ双角錐群 第七短編集『故障かなと思ったら』(2022年)。テーマは「取扱説明書」。
関連
スピンオフに虜囚図がある。本作の映写機が映していた月面図を舞台にした掌編。