野崎まど『2』

読みました。面白かったです。

読むときはちゃんと[映]アムリタ (メディアワークス文庫)舞面真面とお面の女 (メディアワークス文庫)死なない生徒殺人事件―識別組子とさまよえる不死 (メディアワークス文庫)小説家の作り方 (メディアワークス文庫)パーフェクトフレンド (メディアワークス文庫)を全部読んでから読みましょう。

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人間はなぜ創作するのか。この命題に対して『2』が語った理屈と、ぼくが思ったことをまとめておきます。

まず定義を出して、そこから話をはじめよう。

1. 創作とは、神に接近するためにおこなわれる

古来、芸術は神に捧げられるものだった。真に優れた芸術的パフォーマンスに対して、われわれは「神懸かっている」や「神が降りた」と表現してきた。商業的な目的を度外視したときに、「創作は神に接近するためにおこなわれる」という定義は、それほど的を外していないように思われる。

この神は、必ずしも宗教を意図していない。ふつう、人は自分の手に負えないものに関する責任の所在を神に求めたがる。古代、人知を越えた自然現象に対して、めいめいの神があてがわれ、信仰されてきた。同様に、創作されたものを受けて美しいだとか、面白いだとか感じる意味やメカニズムについて、人類はまだ答えを持っていない。だから、その遥かな延長線上に神を望んでいるのだと言って違和感はない。『2』の到達点にも神がいて、でもそれはどうやら到達点ではなかった。

また、この定義だけを考えると、創作されたものは神に捧げられることになるので、それを受容する人間がいなくても成立するように思われる。しかしこの神というのはめいめいの作者の内に抱えられているものなのであって、それは言うなれば仮想読者なのだから、この定義によってもやはり受容者がなければ創作は成立しないように思われる。

次にもう1つ、創作の目的についての理屈が出てくる。

2. 創作とは、人の心を動かすためにおこなわれる

この定義は、われわれの直感に最も親しみやすいように思われる。

最原最早は「全ての創作は人の心を動かすためにある」と言い、また同じ口で「愛とは、人と関係したいと思う欲求」だと言う。だから彼女は、創作とは愛であると断じる。

あとは、目的とは逆方向の理屈が出てくる。

3. 創作とは、人類が適者生存の過程で獲得した行動である

目的というのは人間の精神から生まれるものであって、これは人間の社会的な面を反映している。これに対してこの定義は、人間の動物的な面を反映している。

人間の行動をミームで捉えたときに自ずと生じる考えだが、『2』ではこれがうまくクライマックスを補強している。

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