今年リリースされたアルバムの中から個人的によく聞いていたものをピックアップしていきます。
個人的2022年ベストプレイリストは以下。
Tigran Hamasyan – StandArt
Tigran Hamasyanはアルメニアのジャズピアニスト。これまで中央アジア〜小アジアの民族音楽、プログレ、メタルなどをジャズに持ち込んできた変態ピアニストが満を持して放つアメリカンスタンダード曲集が本作である。アルバム名はStandardのもじりか。この男もついに丸くなったかと思いきや、独特のリズム感にはやはり民族音楽やプログレッシヴ・ロックの気風が感じられ、魔改造されたスタンダード曲のたたずまいはかえって彼の異常性を浮き彫りにしており、Tigran Hamasyanの音楽家としての凄みが感じられる一枚に仕上がっている。
Zeal & Ardor – Zeal & Ardor
スイス系アメリカ人マニュエル・ギャノーが主宰するプロジェクト:Zeal & Ardorによる3rdアルバム。3rdアルバムでセルフタイトルを冠するのは……エモい! ブラックミュージックとメタルを融合した緩急自在のサウンドは、EDMへも幅を広げ「Emersion」へと結実した。重々しいテーマを悪魔信仰的大仰さによって歌い上げるスタイルは欧州的クラシカルさをも孕み、汎世界的メタルバンドとしての地位をより強固なものとしている。
Foals – Life is Yours
最高にポップなFoalsが帰ってきた! 聞いているだけで手足が勝手に踊り出す魔術的なリズムとフックに満ちた本作は、人生の喜びと生きとし生けるものすべてに対する祝福に彩られている。宇宙よ聞いているか? これがオレたちの答えだ。
GHOST – IMPERA
GHOSTはスウェーデン出身のメタルバンド。初期のB級ホラー映画っぽさを前面に押し出した作風に対して、近年ではメロディアスな疾走感をまとったスタジアムライブ映えしそうな曲が目立つ。叙情的なメタルが好きなら聞いてみよう。
Olafur Arnalds – Some Kind of Peace (piano reworks)
言わずと知れたポスト・クラシカルの旗手:Olafur Arnaldsによる2020年の名盤Some Kind of Peaceのピアノ・リワーク版アルバム。今も毎日寝る前に聞いている。いいものはいいのだ。
Marcus King – It’s Too Late
早熟の天才ギタリスト:マーカス・キング率いるブルースバンドの新譜がやってきた。震えるほどブルージーで溶けるほどソウルフルなその歌声は一度聞いたが最後、脳みそをつかんで離さない。オールマン・ブラザーズ・バンドの再来を予感させた前作から2年。歴史は繰り返すが、その度に苛烈さを増していく。
Thee Oh Sees – A Foul Form
原始時代の棍棒のようなサウンドでたたき割られ破裂した脳の谷間から新たな脳幹が生えてこんばかりの純粋培養パンキッシュだ。Oseesのサウンドはあまねく音楽がやがて野生へ帰ることを運命づけられているという事実を思い出させてくれる。
The Snuts – Burn The Empire
のちにUKロック・シーンを決定的に牽引することになるバンドのセカンドアルバムは総じて名盤であるものだが、本作もその例に漏れない。
Muse – Will of the Peaple
このバンドはキャリアを通して上流階級と労働者階級との対立というテーマが一つの支柱になっており、かつ大仰で暗黒風味な味付けを好むことからオーウェルの想像力と同根になりSFとの親和性がきわめて高い。なかでも本作は歌詞を含め世界観がディストピア全開になっており、刺さる人にはより深く刺さるだろう。次の日本ツアーがあるならぜひとも駆けつけてアンコールのWe Are Fucking Fuckedで手首から先がもげるまで空へ拳を突き上げていきましょう。楽しみですね。
The Global Jukebox
アルバムではないですが、慶応大がまとめた世界中の伝統音楽のデータベース。世界地図の上に音楽がマッピングされているところが直観的でいい。泥酔しながら潜っているとどんどん時間が溶けていくので怖くなってきます。
以上、2022年に聴いた音楽でした。
余談ですが今年の秋頃、10年振りにShibayanRecordsを再発見して見事にハマり、その後当時聞いていた東方アレンジ楽曲を改めてディグりながら聴きたおしています。一時期は24時間頭の中でうさぎ大爆発が鳴り続けて眠ることができなくなり、好きな音楽は10年たっても好きでありつづけるんだなと思いました。
来年も良い音楽に出会えるといいですね。