エゴン・シーレ展@東京都美術館

気になった絵についてメモしていたので、それを共有します。

  • カール・モル『自転車に乗る人の居る郊外の風景』
    • 浮世絵に強く影響を受けた平面的な版画作品。
  • フェルディナント・アンドリ、アルフレート・ロラーらデザインのウィーン分離派展ポスター
    • ウィーン分離派結成当初。
    • アール・ヌーヴォー風の装飾的なポスター(ミュシャを思いだす)。
    • 黒いブロックに白い線を組み合わせて装飾的なアルファベットを形成しているもの。
    • カラフルなタペストリーの背景にエジプトの壁画のような幾何的な様式。モチーフを強調して並べ上げる。マニエリスム的。
  • エゴン・シーレ『装飾的な背景の前に置かれた様式化された花』
    • 金色の顔料による背景、奥行きがなく、幾何的・装飾的に描かれた花びらの形状は、クリムトっぽい。
  • エゴン・シーレ『菊』
    • とても輝度が低い赤黒い背景に浮かぶ無数の菊の花びら。不気味さのなかに妖しい美しさがある。
  • カール・モル『冬のホーエ・ヴァルテ』
    • 雪道は、油絵の具の重ねにより、雪が積もっているかのような質感がある。手前の樹皮の質感はとても官能的で見事。
  • アルビン・エッガー=リンツ『森の中(〈祈り〉のための習作)』
    • 青白くぼんやりとした森。画面は平面的であるにもかかわらず、森の奥へと踏み入ることに対する畏怖を感じさせる。観念的な奥行きがある。
    • 『祈る少女』において、宗教的な畏敬の念を表現している。「畏怖」が共通している。
  • アントン・ファイスタウアー『森の中』
    • 右側から日光が差し込んで、三筋の木の陰が見える。光を浴びた木々の立体感が見事に表現されている。中央奥の鮮やかな緑色の木々が目を引く。この絵は遠くから眺めるのがよい。
  • コロマン・モーザー『洞窟のヴィーナス』
    • 青と黄色(補色の関係)を大胆に配したヴィーナス像。色彩の実験
  • コロマン・モーザー『レザン』
    • スイスの山脈。同時期にホドラーと交流があり、ホドラーの風景画における具象の表現に影響を受ける。山肌に配された茶色、緑、ピンク色。色彩と知覚の実験。
  • エゴン・シーレ『ほおずきの実のある』
    • 赤みがかった顔面はマスクを被っているようにも見える。顔の向きと視線の向きが逆方向になっており、そこに二重性・分裂性を感じさせる。
  • エゴン・シーレ『抒情詩人』
    • 赤と青黒を配された不健康な顔色、真横にかしげた首、虚ろに光る眼光、いまにも崩れ落ちそうな骨張った肉体。病的に鮮烈な画家の情動が満ちている。
  • エゴン・シーレ『カルヴァリオへの道』
    • 風景を覆う空は、ボーダー柄のような雲の層に分断されている。夕焼けの赤、空の青、雲の白。横縞(邪)は不吉に映る。
  • エゴン・シーレ『啓示』
    • 暗く重々しい絵だが、奥行きがなく平面的な部分がクリムト的で装飾的に映り、独特。
  • エゴン・シーレ『母と二人の子供 II』
    • これほどまでに不穏なピエタ像があるのか。
  • エゴン・シーレ『吹き荒れる風の中の秋の木(冬の木)』
    • 今回の展覧会でもっとも惹かれる絵だった。
    • 野に一本だけ生える骨張った木が孤独感を体現する。そこから伸びる細長い枝が空間を幾何的に分断し、ともすれば脳神経のように、ともすれば抽象画のように映る。
    • 風景の擬人化。人物画のような風景画。
  • エゴン・シーレ『肩掛けを羽織る裸婦、後ろ姿(〈回心IIの断片〉)』
    • 大型絵の一部分。元絵は、多数の人物がリズミカルに配された構図と象徴主義的側面から、ホドラーからの影響が見られる。
    • おしりの描写は天才的。桂正和の美術的インスピレーションの源泉といわれても不思議ではない。
  • エゴン・シーレ『赤い靴下留めをして横たわる女』『赤い靴下留めをして座る裸婦、後ろ姿』『黄色の女』
    • 肉感を捉えている。
    • 画家自身の様式の変遷がドローイング作品に現れている。エゴン・シーレは油絵のための習作という側面のドローイングは少なく、ドローイングを作品として残している。
  • エゴン・シーレ『横たわる女』
    • 組まれた手と組まれた足が、左右対称をなしており、様式的。
  • エゴン・シーレ『横たわる長髪の裸婦』『リボンをつけた横たわる少女』
    • これはさすがに巨匠のドローイングでしょ。
  • エゴン・シーレ『しゃがむ二人の女』
    • 左右対称をなしており、様式的。黒田清輝が言うところの構想画の雰囲気があり、画家の死によって未完成で残されたことは残念でならないが、それによって神性を帯びているようにも思う。

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